【起業家の心得】経営者の心がけは、いかにインスパイアするかということのみ

皆さんはリーダー、管理職、経営者として、社員、部下をどのようにMotivateしていこうかということについて考えたことがあるかと思います。どうやってやる気を出させるかと。(YouTube 動画はこちらです)

Motivateの日本語訳は動機付けということですね。企業では社員をMotivateするのに、インセンティブを考えます。インセンティブというのは、良い仕事をしたら昇給する、プロモーションする、ボーナスが出る、などのいわゆるご褒美を出すということです。インセンティブで社員をMotivateするというのが一般的な人事管理システムになっています。

一方、仕事の成果が出ない場合には降格、ボーナスがへる、左遷されるなどの結果となります。いわゆる飴と鞭、信賞必罰で社員をマネージしています。余談になりますが、昨年末から大ヒットしている「うっせーわ」という曲がありますね、そのリリックは現代社会が引きずっている、こうすべきだ、こう振る舞うべきだというような、言ってみれば日本の「おもてなし精神」「こうすべきだということ」の裏面、ブラックな面を風刺していると思います。また、飴と鞭をつかったモティベーションポリシーが崩壊つつある、というのは大げさかもしれませんが、この曲の爆発的ヒットの背景には根深い意識の変化があると思います。

果たしてこのインセンティブで社員をMotivateするという手法は、社員のアウトプットを増大させるのにどの程度効果があるのでしょうか? これは私の経営者としての経験からすると限界があるというのが実感です。インセンティブは定量化しやすく、ほかの会社でもっと良いインセンティブがあると、アメリカでは有能な人材は転職します。日本ではまだ課長、部長レベルでの転職がそれほど多くないのであまり問題になっていないようですが、中途採用の転職はこれからどんどん普通になり、日本でもアメリカのように人材の流動性が増していくでしょう。また、社員をMotivateするのにインセンティブという、いうなれば外的影響因子を使うということは、仕事への姿勢を根本的に変えるものではありません。一時的なものです。

ではどうすればいいのでしょうか。私はリーダー、経営者の究極の目標は、社員が「自動運転」の状況になることと考えます。自動運転?何のこと? と思われるかもしれませんが、「面白いから仕事をする」ということです。その結果として成果が出てボーナスが増え、昇進します。ですのでインセンティブは仕事をする目的ではないのです。

皆さんの中には中学、高校のお子さんをお持ちの方も多いかと思います。お子さんがスマホでゲームばかりしていて勉強をしない、やる気がない、ご褒美を出すから勉強しなさい、と言っても聞かない、ということを体験した方も多いと思います。なぜ勉強をしなくてゲームをしているのでしょうか。それはゲームが勉強より面白いからです。

ゲームの何がおもしろいのか?ゲームは、自分が100%コントロールできて、うまくいけばステージが上がっていく、パワーアップする、という、自分でのコントロール選択権があり、結果が可視化されている、ということです。私は勉強とか仕事をゲーム化しろということではありません。ただ、リーダーであり、経営者であるあなたは、思った以上にチームメンバーに大きな影響力がある、ということを知っておいてほしいと思います。

ベンチャーはどうしても少ない数のチームで事業を進めます。チームメンバーひとりひとりのパーフォーマンス、アウトプットがとても重要です。多くの場合は少数精鋭のベンチャー企業が大手企業と戦い(ビジネスとしてですが)勝利することもしばしばです。私もアメリカでベンチャーを経営していたのでよくわかるのですが、超一流大学をトップで卒業した人は原則大手企業に就職します。話を簡単にするためにこの方々の能力を100としましょう。起業したばかりのベンチャーには、残念ながら100の能力の人材は来ません。仮に80の能力の人材としましょう。

100の能力の人が一流企業に就職すると周りは100の能力の人ばかり。仕事は毎日同じようなことをする、いわゆるルーティーンですね。この方々は能力があるのですぐに仕事に習熟してマンネリ化する。マンネリ化すると100の能力を出す必要がなくて、90くらいの力を出せば仕事が終わります。

一方、ベンチャーの方はリーダーが「仕事が面白い」、「各自のアウトプットが会社にとってすごくインパクトある」というカルチャーを作ることに注力すると、80の能力のメンバーが、「面白いから仕事をする、結果がすぐ目に見える」、ということで120パーセントの力を出します、すると80x120パーセントで96の力を出すことになります。大企業の超一流人材が90の力で仕事をしているのに比べて、ベンチャーの人材の力が96、これでベンチャーも十分勝負できるわけです。

つまり、経営者の究極的な目標は、チームメンバーを「インスパイア」することで、単なるインセンティブでMotivateすることではありません。イソップ寓話の「北風と太陽」みたいなものです。北風インセンティブでガンガンお尻を叩いても長続きするアウトプットは出るとは限りません。

経営者として、チームをいかにインスパイアするかということの重要性をお判りいただけたかと思います。余計なことかもしれませんが中学生、高校生を育てるにもこの心がけはあてはまります。では今日はこのへんで。

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