エンジェル投資家というのはあまり耳慣れていない言葉かもしれませんが、Angel (天使)の投資家という意味です。利益を出すことが目的の投資家が天使なわけがないのですが、ベンチャー企業に自己資金を投資する個人投資家が、そのように呼ばれています。
ブロードウェーの演劇・ミュージカルのパトロン支援者をAngelと呼んでいたのが語源といわれています。演劇が好きで、欲得なしに資金援助をする方々です。
テクノロジーベンチャーの立ち上げには、1) 技術、2) 人材、3) 資金、の3つの要素がうまくマッチすることが必要不可欠です。研究者が新規テクノロジーを発明します。このテクノロジーを商業化するには、経営手腕にたける人材が製品開発に必要な資金を調達しなくてはなりません。新しい技術は、海のものとも山のものともつかない代物ですが、技術とベンチャーの経営陣を評価した上で、高いリスクを覚悟で投資をするのが、エンジェル投資家です。
エンジェル投資家とベンチャーキャピタリスト(VC)の大きな違いは、前者が自己資金(=自分の貯金)を投資するのに対して、後者は、年金基金や機関投資家など(Limited Partners, LPsといいます)から預かった資金から投資します。VCは預かった資金をまとめてファンドをつくり、投資のマネージをします。そしてファンドは10年が満期で、満期時にはLPに利益を分配しなくてはいけません。VCはファンドマネジメントの手数料(年間2-3%)と利益の一部(標準は総利益の20%ほどです)を報酬として受け取ります。うまい話に聞こえますが、成果(利益)が出ないと、次のファンドを作るのにLPが集まらず、ビジネスが継続しません。そのようなわけで、VCがハゲタカと呼ばれるようにいつも厳しい姿勢なのは、成果を出さないといけないという必死の状況があるからです。
エンジェル投資家は、自己資金の投資ですので償還の期限はありません。そのような理由でハゲタカではなくてエンジェルということになるのでしょうが、趣味でリスクの高い投資をするのではありませんから、真剣です。エンジェル投資家には成功した起業家が多く、投資したベンチャーの社外取締役やメンターとして経営に関与することが一般です。