株式型クラウドファンディング規制の日米比較

クラウドファンディングというのは最近馴染み深くなってきた言葉ですね。クラウド(群集)ファンディング(資金調達)とは文字通りに、不特定多数から資金調達を受けることです。リーマンショックのころにアメリカではじまったのですが、2008年に立ち上がったIndiegogoとか2009年のKickstarterとかがクラウドファンディングのポータルサイトとして有名です。日本でもReadyfor?とかMakuakeなどが立ち上がって、起業家が活用しているようですし、一般投資家の方々もいろいろなベンチャー案件へアクセスができるようになりました。日本での2012年からの累計でクラウドファンディングの総額が50億円弱、一件当たりの資金調達額の平均は70万円から80万円というレベルですね。ちょっとこれだけに頼るには資金不足ですね。

クラウドファンディングを大きく区分すると、1)寄付型、2)購入型、3)投資型、4)融資型、となります。1)寄付型は災害救済支援の寄付などチャリティー活動が多いです。2)購入型は、スタートアップが開発中の製品を投資の対価として受け取るものですね。3)の投資型はスタートアップの株式に投資、4)の融資型は、文字通りスタートアップに一時的に資金を貸し付けて後日利息付で償還するものです。

インターネットで資金調達をするわけですから、詐欺のようなケースもあるというリスクもありますね。どうやって投資家を保護するか(どのような規制を敷くか)が大きな課題になります。

Jumpstart Our Business Startups Act (JOBS法)は、2012年5月に米国議会で承認された法律で、スタートアップ企業が資金調達がしやすいようにという目的で定められました。資金調達には(未公開の)株式の売買が関与するので、この法律の発効には米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission, SEC)の批准が必要で、JOB法には7項の規定があるのですが、一項ずつ批准されてきました。このうち、スタートアップ企業の資金調達に大きなインパクトがあるのが Title III と IV (第3項と 第4項)です。Title IV については後日寄稿します。

JOBS法の第3項はクラウドファンディングのついての規定です。2016年5月16日にSEC が最終的に批准し発効となりました。(できたてほやほやの法律です)このJOBS法の第3項で、株式型のクラウドファンディングで1年間に$1mmまで(約1億1千万円)資金調達ができるようになりました。一般に株式の売買には米国SECがしっかり監視をしています。特に、会計監査、情報開示については極めて厳しいものがあります。この法律の発効以前は、資金調達をしたい企業はまずSECに書類申請をして(詳細な監査報告書とか面倒な書類が多いです)、4-8ヶ月の審査機関を経て承認を受けるというプロセスが必要でした。費用と時間の負担がスタートアップ企業に多くのしかかっていました。第3項は、このプロセスを簡素化し、クラウドファンディングのポータルサイトがSECの代理として、資金調達をするスタートアップの企業の情報を公開、管理するということになりました。(SECはこれらのポータルサイトを監督するということになります)

一方日本では、2015年に「日本再興戦略」の一環として金融商品取引法を改定し、投資型クラウドファンディングポータルサイトの認定用に「少額電子募集取扱業者」というカテゴリーを作りました。一人当たりの投資限度額50万円、資金調達限度額は1億円という制限がついています。

日米ともに新法律が発効したばかりなので、運用が始まっていないと実情はわかりませんが、スタートアップ企業にとっては追い風の法律なので、うまくいってほしいものです。

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