コーヒーブレーク:VCファンドへの資金流入(日米比較)

シード段階ベンチャーの資金調達の日米比較の稿でご覧いただいたように、日本のVCとアメリカのVCとの規模に大きな差があります。GDPの比較(アメリカ3、日本1)からしても、アメリカのVCが2015年度に6兆3000億円の投資をしたのに比べ、日本では1200億円でした。

日本はリスクを嫌う文化だからだ、ということだけでは説明がつきませんよね。私が感じるに、大きな違いはマネープールの動きにあります。

給与の中から年金の積み立てをしますよね。また生命保険とか掛けますよね。これらのマネープールは、年金基金や、生命保険会社が皆さんのお金を預かって運用します。日本の厚生年金と国民年金の場合は、年金積立金管理運用独立行政法人Government Pension Investment Fund, GPIF)が運用していますし、日本生命など生命保険会社大手は原則自社で資産運用しています。GPIFの運用資産は約140兆円と気の遠くなるような巨額です。アメリカの国民年金である社会保障(Social Security)の年金運用高はさらに巨額で、約310兆円です。ただし、アメリカでは厚生年金(事業者組合の年金)は別途に運用されています。

アメリカではこのような年金ファンドの資産運用にVCファンドへの投資も組み込まれています。つまり、株式や債権で資産運用をするのと同じように、ひとつの選択肢としてVCファンドへの投資があります。日本では年金がVCファンドなどのPrivate Equityに投資することはできません。(法的に許可されていません)

アメリカのVCファンドへの投資状況を見てみますと、以下のような区分になっています。(Dow Jones Private Equity Analyst Sources of Capital survey : 2014)

VC LP_001

年金だけでなく、財団、大学の寄金などもVCファンドに投資をしているのがわかります。もちろん年金は運用には慎重で、運用資産のせいぜい1%ほどがVCファンドで運用されます。ただ、なにせ母数が巨大なので、VCファンドへの投資も大きな金額になります。2015年度は総額で約3兆円がアメリカのVCファンドに投資がありました。すごいですね。一方日本では前述のように年金、大学の寄金、厚生年金、などはVCファンド投資をしない(現状では、「してはならない」)ので、VCへ流入する資金が極端に少ないです。最古で最大手VCのJAFCOなどは、上場企業ですからファンドレイジングを増資という形でも行っています。(仕方がない) Public Moneyをハイリスクのベンチャー投資にあてなければならない状況、というのはちょっと考えさせられます。

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