シード段階のテクノロジーベンチャーの資金調達(日米比較)

先日の、「日本のイノベーションと起業家精神」と題したカンファレンスのパネリストとして話したのですが、新規技術に基づいたベンチャー(テクノロジースタートアップ)のシード段階の資金調達は日米で大きく異なっています。

シード(種)段階というのは、その名の通りにベンチャーを立ち上げた時点のことです。まだ、芽が出ていない(出るかどうかもわからない)段階のベンチャーです。ライフサイエンスの例でいえば、大学の研究室で、病気の新しい診断法について発明があったとします。新規性のある発明である場合、特許を申請してこの発明を護ります。この新しい診断法を患者さんのもとに届けるには、認可に必要な臨床試験や製造委託をしなくてはならず、巨額の資金が必要となります。以下、新規技術に基づいたテクノロジーベンチャーの資金調達について話をします。

シード段階とは、大学の研究室から独立して、ベンチャー会社を設立するステージをいいます。前のグログでも少しお話しましたが、ベンチャー設立の資金調達はなかなか困難です。自分の貯金や、親戚・友人からの借金がまず最初の資金となることが多いですね。大体この総額は500万円から1,000万円というところでしょうか。たぶん会社登記や定款を作ったりする弁護士費用で使い果たしてしまいますね。

そのあと設立後1-2年のベンチャーの運営資金としては、とりあえず5,000万円から1億円の資金が必要となります。まだ製品の売り上げは当分見込めない状況です。この時点でのテクノロジーベンチャーの資金調達が、日本とアメリカで大きく異なりますので比較してみたいと思います。(日本の状況は急速に変化していますので、あくまでも本投稿時の私見をしてお読みください)

一般に資金調達のチョイスとしては、dilutiveとnon-dilutiveファイナンスがあります。この違いについては別稿で詳しく述べますが、端的にいうと株式での資金調達(dilutive)かそれ以外かということです。non-dilutiveの資金調達には公的な補助金や、ローンや融資、ライセンス契約などがあります。今日は新株発行での資金調達(dilutiveファイナンス)に限っての日米比較をします。

テクノロジーベンチャーのシード段階での新株発行での資金調達には、ベンチャーキャピタル投資家(VC)が重要な役割を果たしてきました。ただ、アメリカではVCのファンドがどんどん大きくなっていて(800億円、1000億円のファンドも珍しくありません)、彼らはlate stage (売り上げがすでにあるか、目途がつく段階)のベンチャーに10億円、20億円といった大きな額の投資をするのが主な活動になってしまいました。統計によると2015年度ではアメリカVCの投資総額は$60 bil. (約6兆3000億円)ですが、シード段階のベンチャーへの投資は$1.1 bil (約1200億円、総額の1.8%)しかありません。

すべて$1=105円で換算、数字は丸めてあります。 US JPN
VC 投資総額 (2015年度) 6兆3000億円 1200億円
うちシード段階の投資額 1200億円 (1.8%) 170億円 (14%)
エンジェル投資グループの投資総額 (2014年度) 2兆5000億円
うちシード段階の投資額 6500億円 (25%)
GDP (2013年度) 1680兆円 500兆円

この表で突出しているのは、アメリカのエンジェル投資家グループのシード段階への投資額です(6500億円)。VCのシード投資額とあわせると7700億円になります。一方日本にはエンジェル投資家グループがまだ存在しません。日本のVCのシード段階のベンチャーへの投資額は170億円です。日米のGDPの比が3:1ですが、シード段階のベンチャー投資額の比率はなんと45:1です。日本政府もこの辺の事情を鑑み、ベンチャー補助金の増額や国立大学系ベンチャーファンドの設立でテクノロジースタートアップの支援をしていますが、まだまだ資金が足りないのが現状です。自己資金や親戚、友人からの支援に頼っているだけではベンチャーは育ちません。

どうしたらよいと皆さんは思われますか?