カンファレンス報告 (2) : Innovation and Entrepreneurship in Japan

カンファレンスの第2日目も3つのセッションがありました。

Session IV は、イノベーションと規制、というテーマで、UC Berkeley教授のSteven Vogel氏が日本の市場開放規制について、UC San DiegoのAhmed Abdulla氏は、太陽光発電に焦点をあてた日本のエネルギー政策についての講演でした。

Vogel教授は、アメリカのイノベーション関連規制(原則としてイノベーションが市場に出やすくするように便宜を図る規制緩和)の背景と、日本における同様の規制緩和やガイドラインの作成について、特にIPO、コーポレートガバナンス、ストックオプションなどの法制化、ベンチャー投資に関する法的環境整備を比較して考察を述べました。日本はアメリカと異なり、Free Marketという観念ではなく、産官の協調を重視した政策が施行されています。私見ですが、アメリカではとにかく「Winner」を生み出すのに必要な体制を整え、日本では「敗者」をできるだけ少なくするような配慮を組み込んだ政策を重視していると考えています。

Abdulla氏は、日本のエネルギー市場の推移について考察し、日本の太陽光発電が2000年代中盤まで市場を大きくリードしていたにも関わらず、研究開発が衰退し、中国製の太陽光パネルに世界市場を席巻されてしまったこと、東日本大震災後の福島原発の事故があってはじめて、再生可能エネルギーの実用化に政府が本腰を入れる様になったことなど極めて興味深いデータの分析の発表がありました。つまり、研究開発促進と実用化促進(政策)との間に大きなギャップがあったということです、日本のエネルギーの原発依存率が低下していく傾向の中で、再生可能エネルギー政策も試行錯誤の感を否めませんね。

Session V は、イノベーションと起業資金というテーマでのパネルディスカッションでした。私もパネリストとして参加しました。パネリストは私のほかに、東京大学の各務茂夫教授TechCoast AngelsJeff Draa氏、Martingale Asset Management 副社長のJohn Thomas氏の計4名でした。イノベーション(新規技術に基づいた)ベンチャーの立ち上げ時(Seed Stage)の資金調達は日米でどのように異なるかということが議論の焦点でした。2つ大きな違いがあり、まず第一点目は、VCの規模です。アメリカでの2015年度のVC投資総額は、約$60 bil.(約6兆5000億円)で、そのうちSeed Stageの投資が約$1.1 bil.(約1,200億円)であるのに比較して、日本のVC投資総額は約1,200億円、Seed Stageの投資は約170億円でした。GDPがアメリカは日本の約3倍ですから、その比を考えても、日本のSeed StageのスタートアップへのVC投資がいかに少ないかが明らかです。

第2の違いは日本では組織だったエンジェル投資家グループが無いということです。アメリカでは、1990年代の後半からエンジェル投資家グループが活動を始め、2014年度では総額$24 bil.(約2兆5000億円)の投資、うちSeed Stageの投資が1/4の$6 bil.(約6,500億円)と、VCを大きく越えています。つまりアメリカではSeed Stageの資金調達においてエンジェル投資家グループがきわめて重要な役割を果たしています。日本でなぜエンジェル投資家グループが組織されないのか、という議論になりましたが、金商法などの法制面と個人投資家のリスク許容度の違いによるものが大きいのではないか、という議論になりました。皆さんはどうお考えになりますか?

Session IV は、日本での起業をテーマに、Santa Clara大学のRobert Eberhart教授と一橋大学のChristina Ahmadjian教授の講演がありました。Eberhart教授は日本での起業とローカルコミュニティーとのインターアクション、日本の企業データの解析からコミュニティーに根付いた安定経営、という大きな問いにアプローチをしていました。一方、Ahmadjian教授は日本の地ビール業界の発展の経緯とCraft Beer業界への移行について経済学的な見地から分析していました。

サンディエゴにいても、日米の研究者が多く集まり日本ビジネスについてこのようなディスカッションができるのはすばらしいことだとつくづく感じました。