コーヒーブレーク:投資家へピッチをする時のボディーランゲージの重要性

起業家は、当然ながら自分のベンチャーの事業展開に100%エネルギーを投入するのですが、ベンチャー企業を立ち上げてすぐ気がつくことは、資金調達にやはり100%エネルギーを投入しないといけないということです。つまり起業家は最低200%のエネルギーをベンチャーに注入しないとならないということです。大変な話です。

資金調達は、皆さんの推察どおり「営業活動」です。自分の事業内容が商品で、それを買ってくれる(=投資してくれる)方々に当たっていくわけです。営業をしたことのある方ならよくお分かりと思いますが、一度話を聞いただけで買ってくれる方は非常にまれです。ベンチャー投資の場合は一口数千万円とか数億円とかの話ですから、そう簡単に話は決まりません。また、100件当たって、1、2の投資家が興味を示してくれればいいほうでしょう。私も自分の製薬ベンチャーのCEOとして資金調達をしていたころは、興味があるという投資家の方々には世界中(アメリカ国内、日本、ヨーロッパ)どこでもすぐに出かけていました。99%は断られます。幸いに、投資を快諾してくださった投資家が十分なだけいたので、会社の経営は進められました。株式上場まで持っていけたので、上出来といっていいでしょう。

資金調達のプレゼンテーションについて面白いブログを見つけました。プレゼンテーションについてのブログといってもパワーポイントスライドの使い方、というようなものではなく、ボディーランゲージについてです。このブログは英語ですが、わかりやすく書いてありますのでご興味のある方はご覧ください。ビデオも入っています。このブログの著者のVanessa Van Edwardsさんは、ボディーランゲージ研究の権威で交流させていただいています。

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このブログは前の投稿でふれた、Shark Tankというテレビ番組で、Shark(エンジェル投資家)から投資を受けるのに成功した起業家たちのピッチの仕方についての分析です。以下に要約をまとめますね。

Sharkへの完璧な投資ピッチの秘訣 (Vanessa van Edwards)

その1 「触って、触れて」の威力
商品、またはプロトタイプでもいいので、投資家に触れてもらう。人間というのは「モノ」に触れているうちに感情移入して愛着が沸いてくる。愛着が沸くと、自然にそのモノの価値が高まる(=欲しくなる)。

そうかもしれませんね。子供が玩具店でおもちゃを触っているうちにどうしても欲しくなって、お母さんに「買って、買って」とねだるのと同じような心理なのかもしれません。

その2 最初の30秒が勝負
このテレビ番組では起業家が投資家たちの前に進むところで録画、それから投資家たちの前に立ってピッチをはじめると録画となり、ピッチをはじめるまでの30秒で勝負が決まる。姿勢良く、自信を持って入場すること。そして商品サンプルをみせたりデモンストレーションをする場合には、スムーズに、商品を取り出せるようにした状態で持参すること。

その通りですね、起業家は投資家のオフィスの受付のところから観察されますし、挨拶をして名刺交換するところで第一印象が決まってしまいます。投資家のピッチとはちょっと違いますが、TEDトークで人気のあるものは、最初の7秒ですでに差がついているということも言われています。第一印象が肝心です。誰でも緊張するものです。私の場合は投資家のオフィスに入る直前に、何か面白かったことを思い出して(人に気づかれないようにして)「笑う」ことをしていました。笑点の大喜利のギャグで面白かったものなどを思い出すといいですね。「心から笑う」と表情筋がリラックスして皆さんとてもいい顔になります。

その3 手振りを効果的に使う
話をしている人を見るときに、視線は自然に相手の手にいく。これは人間の本能的な反射で、相手が武器を持っていないかを確認し、安心するということである。この自然の視線を逆手にとって、起業家はピッチをするときに手振りを’効果的に使うのが重要である。

日本人は手振りを使うことが少ないのですが、うまく使うととても効果的です。たとえば落語家は話のプロですが、手振りを非常にうまく使いますよね。この原理です。

その4 ピッチの中に逸話をうまく入れる
一般にピッチでは商品のこと、起業家自身の略歴を機関銃のように話して終わることが多いが、そのようなピッチだけでは投資を受けることができない。ピッチの間に、この商品の事業を始めることになったきっかけの話や、カスタマーが喜んでいる話(Testimonial)などを挿入すると、Sharkとのコネクションが深まり、投資を受ける成功につながる。

これもその通りですね。投資家は毎日ピッチを沢山聞いているので、心に残る逸話があると、その商品と起業家のイメージが記憶に残ります。うまく手振りが入ったピッチだったり、商品に触れてみることができたりすると、さらにインパクトが強く、投資を受ける可能性が高まります。

日米で若干状況が異なるかもしれませんが、原則としては非常に理屈に合った分析と思います。ピッチの時間は短くて1分(エレベーターピッチ)、長くて10分くらいですから、この貴重な時間を以下に効果的に使うかということは起業家の腕にかかっています。

 

 

 

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