新しいベンチャー資金調達法: JOBS法 Title IV(第4項)とReg A+について

今回はタイトルをご覧になって「はぁ?」という方も多いと思います。ほかにいいタイトルのつけかた方を思いつかなくてすみません。この新しい法律は、アメリカのベンチャー企業にとっても投資家にとっても大きな変革(改善)なので、がんばって説明してみます。(但し書き:私は弁護士ではないので、詳細は会社法、財務法の専門家の意見をおききください。)

前稿で株式型クラウドファンディングの話をしました。アメリカでJOBS法が制定され、そのTitle III(第3項)の規制緩和で、インターネット上で株式型のクラウドファンディングがやりやすくなりました。2015年6月19日に発効したTitle IV(第4項)も重要な変革です。Title IVとReg A+という新しい法律が発効したことで、ベンチャーと株主にとって資金調達の柔軟性がでてきました。

1933年に制定された米国証券法(1933年証券法)で、証券の発行市場(一次市場)について細かい規制が発効しました。つまり、株式を用いた資金調達(=増資)についての規制の詳細が決められ、一方1934年証券取引所法で株式の流通市場(二次市場)の規制が決められました。

1933年証券法では、証券の発行者(単純に「企業」としましょうか)は投資家に対し、目論見書で、情報開示(会社の「いいところ」だけでなく、あらゆる「リスク」を開示する)の義務と同時に、米国証券取引所(Security and Exhchange Comission-SEC)へ証券発行の申請のうえ、認可(情報開示の書類がそろっているかなど。企業の業績についての評価は全くありません。)を受けることが義務となっています。いわゆるIPO (株式上場)への手続きです。上場後もSECを通じて、4半期ごとの財務報告書、株主移動報告書など種々の情報開示が義務付けられています。(私の経験から申し上げますと、ものすごい負担です。)

従来はベンチャーの増資(私募)は、1933年証券法の除外項目としてRegulation D(一般にReg Dと称しています)があります。少数の投資家からの増資である場合には、SECへの証券登録の義務が免除されます。未上場ベンチャー企業の資金調達はほとんどがこのReg Dに基づいた私募です。ただし、Reg Dは、個人投資家の「投資資格」に大きな制限がついています。Reg Dの増資に投資できる投資家をAccredited Investorと定義していますが、このAccredited Investorは、以下の条件のどちらかを満たさないといけません。いわゆるエンジェル投資家は原則的にAccredited Investorです。

  1. 住居以外の資産が$1mm以上ある個人(預貯金、有価証券、投資不動産などの財産の合計が1億円以上あること。)
  2. 過去2年間年収が$200,000以上(夫婦で$300,000以上)で、今後も同じレベルの年収が維持できると予測できる個人(年収が2,000万円以上あること。)

ですので、投資できる人がいわゆる富裕層に限られてしまいます。

JOBS法第4項と、SECで制定されたReg A+では、未上場ベンチャーに投資できる個人の条件を引き下げ(多くの人が投資できる)ました。この条件は株式型クラウドファンディングの投資家の条件にもあてはまります。

つまりNon-accredited investorでも未上場企業に投資ができるようになりました。年収$100,000未満(約1,000万円)の投資家は、年間投資限度額は年収の5%または$2,000の大きい方まで、年収$100,000以上の投資家は、年間投資限度額の年収は10%または$10,000の小さい方ということになっています。つまり投資家の裾野を広げました。ただ、ギャンブルになるといけないので投資額の上限を決めています。一方Accredited Investorには投資額の上限はありません。

Reg A+はベンチャー企業側にとっても大きなメリットが出てきます。12ヶ月間に資金調達できる上限を最大$50mmに引き上げたこと、また、二次市場としてのミニIPOがしやすくなったということです。つまり、ベンチャー企業が上場しやすくなり、株式に早い時期に流動性を持たせることができるということです。

Reg A+にはTier 1とTier 2があります。

Tier 1

  • 12ヶ月間の資金調達は$20mm(約20億円)まで
  • 州ごとの規制あり
  • SECへの定期報告義務は最小限

Tier 2

  • 12ヶ月間の資金調達は$50mm(約50億円)まで
  • 州ごとの規制なし
  • SECへの定期報告義務はTier 1より複雑

といった違いがありますが、いずれもOver the counter(日本のグリーンシートに近い感じです)での株式の取引が可能になり、投資家に流動性を与えることができるという大きな利点があります。

前稿で述べたように、株式型クラウドファンディングの規制(緩和?)がなされたこと、Reg A+で株式に流動性を出すこと(ミニ上場)がしやすくなったことは、未上場のベンチャー企業にとって追い風であることには間違いありません。一方、投資家の皆さんはこれからいよいよ目を利かせて投資をしないといけませんね。