【起業家の心得】ベンチャーの資金調達の手法

今日はベンチャーの資金調達の手法についてのお話をいたします。このブログの動画版はYouTubeにアップロードしていますのであわせてご覧ください。リンクはこちらです。チャンネル登録、コメントなどもよろしくお願いいたします。

ベンチャーの創業時ですが、多くの場合は親戚、友人からの投資を含めた、広い意味での自己資金が中心になるかと思います。ただし、ベンチャーを立ち上げてしばらくすると、どうしても外部からの資金を調達することが必要になってきます。 その場合、資金調達の方策がいろいろありますが、まず大きく分けて、

1)資金調達後に創業者の持ち株比率が変化しない、非希釈性の資金調達

と、

2)資金調達後に創業者の持ち株比率がさがっていく、希釈性の資金調達

とがあります。

 

[非希釈性の資金調達]

まず資金調達後に創業者の持ち株比率が変化しない、非希釈性の資金調達についてお話いたしましょう。この非希釈性の資金調達は大きく分けて 4つあります。

1.銀行からの 借り入れ・融資

一般にベンチャーを立ち上げたばかりですと、ビジネスの実績がないので融資を組むことは困難です。例外としては、創業者に十分な担保(=財産)と信用があることです。一般には、過去2年間のビジネスの収支や成長の実績、黒字化の見込みなどのデータが融資審査で必要なので、個人で十分な担保と信用がある場合以外は大変難しいです。

2.公的補助金

これはグラントとも呼ばれていますが、 国や地方公共団体などがベンチャー企業や中小企業の育成の目的で資金援助をするプログラムです。SDG関連の新規技術の実用化を支援する補助金や医療分野への補助金がこの例です。

3.戦略提携

戦略提携というと大げさな言い方に聞こえますが、例えばベンチャーが ある技術を持っていて、アメリカやヨーロッパでの技術の商業化の権利や特許行使権を欧米の企業にライセンスするということです。もちろん技術や製品が実用化しないことには売り上げが出ないのですが、対価として、ライセンス契約時に一時金の支払い、また、製品開発の進捗に応じてのマイルストーンペイメントなどを受け取ることが可能です。戦略提携ではベンチャーの技術や製品が大手企業にとって魅力的であるということが重要なポイントとなります。

4.クラウドファンディング

クラウドファンディングでは、開発中の製品やサービスの前売り(割引で)という形式でベンチャーが資金調達をしています。最近では 、ベンチャーへの株式投資というような形式のクラウドファンディングも出てきているようですが、まだ稀です。商品開発が進んでいて、あと半年位で販売を始められるような製品やサービスを割引で予約販売するというアイデアです。

 

[希釈性の資金調達]

次に希釈性つまり資金調達後に創業者の持ち株比率が減っていく資金調達についてまとめます。これは新株発行に基づいた資金調達を行うということです。この希釈性の資金調達のターゲット投資家はいわゆるベンチャーキャピタルリストVCが中心になります。

新株発行に基づいた資金調達時に重要となるのは、会社の価値いわゆるバリュエーションです。そのバリュエーションに応じて新株を発行して資金を調達します。一般には、資金調達時のバリュエーションに対して25%から30%ほどの新株を発行するケースが多いです。例えば企業価値が10億円として、2億5,000万円(10億x25%)から3億円(10億x30%)ほどの資金調達をするということです。この場合、新しい株主が 会社の約 20%(2.5億/12.5億)の株主となります。創業者を含めた既存の株主の保有比率が希釈されますが、75%とか80%というレベルを維持できます。

この新株発行の割合については特に規則はありませんが、仮に10憶円のバリュエーションで5億円の資金調達をした場合は、新しい株主が 会社の1/3(5億/15億)をいきなり保有するというようなことになります。ベンチャーとしては 多くの資金を一度に調達したいのですが 、資金調達後に会社のコントロール、すなわち経営が難しくなるということ懸念があるので、とりあえずは必要十分な資金を調達して事業を進捗させ、企業価値がさらに上がった時点でまた追加で新株を発行して資金調達をするということが通常です。

皆さんもシリーズA、シリーズB、シリーズC、の資金調達のラウンド、といったようなことを聞かれたことがあると思いますが、これはA->B->C と段階が進むごとに、会社の価値が上がっての新株発行による資金調達をしているということです。

またこの新株発行での資金調達では、ベンチャーの成長段階に応じて投資家の対象が異なる場合があります。たとえば、創業間もなくの時点で数千万円から1億円程度の資金調達をする場合は、アメリカではエンジェル投資家グループにから資金調達する場合が 多いです。

また大企業も投資ファンドを社内に作っていて、こちらはコーポレートベンチャーキャピタル、頭文字を取ってCVCと言いますが、こういう投資ファンドもベンチャーの資金調達にとって大事な投資家ターゲットとなります。特に事業会社がCVCを作っていることが多いので、テクノロジーや製品、サービスの内容をよく理解た上で投資をするということ多いです。また、さきほど述べた戦略提携の対象となることもしばしばです。

新株発行による希釈性の資金調達と、融資やグラントなどによる非希釈性の資金調達とどちらがいいかということになりますが、理想としては非希釈性の資金調達を最大限に活用して、足りない分を新株発行による資金調達で集めるということでしょうか。

また、新株発行の場合は、株の買い手、つまりベンチャー投資家へのアプローチが重要で、ベンチャーキャピタリスト、エンジェル投資家、コーポレートベンチャーキャピタルなどへ説得力のあるピッチやプレゼンをすることが併せて重要となります。ベンチャーの成功は資金調達の成否に大きく依存します。大変ですが皆さん頑張りましょう。