【起業家の心得】エンジェル投資家とは? エンジェル投資家のことを良く知ることは必須!(VCの話はしましたね)

今日はエンジェル投資家についてのお話をいたします。

この起業家の心得シリーズではベンチャー経営者の皆さんにとってお役に立つ ことをお伝えしてまいります。YouTubeに動画をアップしていますので、チャンネル登録、コメントなどもよろしくお願いいたします。

アウトラインです。

1エンジェル投資家とは

2スタートアップ ベンチャーの投資家ターゲットとしてのエンジェル投資家の重要性

3エンジェル投資家グループの投資のプロセス

です。

エンジェル投資家とは

エンジェル投資家とは原則個人投資家です。アメリカでは定義が決まっていて、適格投資家というカテゴリーにあてはまることが必要となります。

その適格投資家の資格要件とは、

1.年収が20万ドル 以上ある個人 (日本円で2,000万円以上ということですね)

2.夫婦合わせた年収が 30万ドル以上の所帯 (所帯の年収が3,000万円以上)

3.流動資産が100万ドル以上あること(住居以外で約1億円以上の流動資産)

4.ファミリートラストなどの法人組織として投資する場合、資産が500万ドル(約5億円)以上あることです。

この4つの要件のうち1つでも当てはまれば未上場ベンチャー企業に投資できる資格があるということになります。特別な証明書のようなものはありませんが、ベンチャーに投資をするときには、投資を受けるベンチャーから、あなたが適格投資家であるという一筆をサインさせられることがあります。その場合でも特に銀行の残高証明とか、財産証明の提出を求められることはありません。

日本の金融庁にあたる米国証券取引委員会SECは、原則として上場企業の監督官庁です。上場企業は情報開示、つまり四半期ごとの決算報告、収支予想の発表や修正などの義務について厳しく規定されています。一方、未上場企業はSECの直接監督下にはなく、 四半期の財務報告、年次報告などの開示の義務はありません。つまり未上場ベンチャー企業が資金調達をする場合は、投資家が、直接会社の経営陣から情報を聞き取り、その情報に基づいて自己責任で投資判断をするということになります。また、ベンチャー企業はリスクが高く、いってみれば倒産する確率が8割、9割という状況を考慮したうえでの投資です。

投資したベンチャーが倒産した場合に、それが犯罪とか詐欺でない限り、「損した、なんとかしろ」、「お金を返せ」、などというようないわゆる株主のクレーム、被害届をお役所は受けつけないですし、株主に対して会社側に原則法的責任はない、というのであります。アメリカではエンジェル投資(VCからの投資も)については、投資家は損失が出ても被害届を出さないですし、もし出しても誰も相手にしてくれません。ですからベンチャーの投資案件を評価する時には、たくさんの質問項目にベンチャーが答え、得られた情報に基づいて投資家自らが判断をしてから投資決定に至っています。エンジェル投資家と、別の動画でお話ししたベンチャーキャピタルとの大きな違いは、VCがLPという投資家グループから委託された資金を運用するのに対し、エンジェル投資家は自己資金を投資するということです。そういう意味ではエンジェル投資家は職業投資家ではありませんし、自分の財産のうち何%をリスクの高いベンチャー投資に充てるかということも個人の自由です。

エンジェル投資家はスタートアップベンチャーにとって重要な資金調達源

アメリカのエンジェル投資家は、スタートアップのベンチャーに投資して、さらに経営を手伝ったりアドバイスをします。ハンズオンの投資(腕まくりして一緒に仕事をする)ということです。

エンジェル投資家グループは全国レベルでの投資組織はなく、地域ごとにグループがあるという感じです。ざっくりしたたとえですが、ロータリークラブとかライオンズクラブとかいうのが地域ごとに支部があってそれぞれが地元で活動をしているというのと似た感じです。Angel Capital Associationというエンジェル投資家の協会がありますが、ここにはアメリカとカナダの260のエンジェル投資家グループ、14,000人の投資家が会員になっています。

このエンジェル投資家グループが毎年どのくらいスタートアップに投資しているかというデータがあります。2018年が最新データなのですが、エンジェル投資家グループは、アメリカ全体で総額2兆 5,000億円にのぼる投資をしています。エンジェル投資家個人ごとの、ベンチャー1件当たりの投資額の平均は数百万円というレベルなのですが、エンジェル投資家グループのメンバーは人数が多いので、一人当たり数百万円の投資も人数が集まるとを非常に大きな額になります。

仮に一人百万円投資するとして、30人集まれば3,000万円、100人で1億円ですね。アーリーステージだけを見ると、エンジェル投資家は、さきほど申し上げた年間投資総額2兆5,000億円のうちの約1/4、つまり6,000億円から7,000億円を立ち上げまもないスタートアップへ投資しています。一方、ベンチャーキャピタルの年間投資総額は10兆円、15兆円となるのですが、そのうちの 1%ぐらい、つまり1,000億円から1,500億円が スタートアップへの投資になっています。 ということで、エンジェル投資家グループのスタートアップへの投資額はVCの5-6倍です。また、エンジェル投資家は、リタイアした起業家も多く、ハンズオンと言う形で経営を支援したりアドバイスもします。そういう意味でイノベーションエコシステムの中でエンジェル投資家は非常に重要な役割を果たしています。

アーリーステージのベンチャーはリスクが高く、会社を立ち上げて数年すると、8割から9割がいろいろな理由で倒産します。もちろん投資する時には投資家側が深くふみこんでリスク評価をするのですが、ビジネスでは未知のこと、想定外のことが普通に起こるので、成功するベンチャーは実に稀です。ただし成功するベンチャーはそれこそ投資金額の何倍、何十倍もリターンを出すことがあるので、結果としてはプラスになっている場合もありますし、投資などせずに定期預金にしておいた方がよかった、ということもあります。

3  エンジェル投資家グループの投資プロセス

多くのエンジェル投資家はグループで投資案件を検討しますが、投資するかどうかの判断は個人ごとにします。私は、現在住んでいるカリフォルニア州サンディエゴでエンジェル投資を始めて15年以上になりますが、メンバーになっているアメリカ最大のエンジェル投資家グループであるTech Coast Angelsの例を見てみましょう。過去にTech Coast Angelsのブログを書きましたので、あわせて参考にしてください。

Tech Coast Angels, TCAと略しますが、南カリフォルニアを中心に活動をしているエンジェル投資家グループです。500名ほどのメンバーがいて、多くはリタイアした起業家、また、大きく成長したベンチャーの経営チームにいた方々です。TCAは1996年に設立され、25年以上の活動歴のあるグループです。2019年度には$19mm(約20億円)を52社に投資しています。歴史の長いグループなので、ウェブサイトを通じてアメリカ全土から月に60から80件の投資検討の申し込みがあります。その申し込み案件をスクリーニングして、月例の案件検討会で4-5件のプレゼンがあり、Due Diligenceという詳細な投資評価のステップにすすむか協議します。投資に向けてのDue Diligenceをすることになった場合は、TCAのメンバーで評価チームを作り、技術、特許、市場性など多面的評価をします。通常は1ヶ月以内に評価を終えて、メンバー全体に報告をします。その後はメンバー個人レベルで投資するかどうか判断をします。グループが全員投資するということは非常にまれです。

エンジェル投資家が投資判断をする上でとても大事なポイントは、ベンチャーの経営チームが ”Coachable” かどうかということです。Coachable という英語はあまり聞き慣れていないかもしれませんね。Coachable っていうのはエンジェル投資家が経営戦略のアドバイスをしたときに、ベンチャーの経営チームが貰ったアドバイスを素直に、積極的にとりいれる姿勢を持っているかということです。つまり投資家側からするとコーチのしがいがあるかどうかということです。先ほどのDue Diligence 中には投資家とベンチャーの面談が何回もありますが、この期間中にベンチャー経営チームがCoachableかどうかも評価します。ベンチャー経営チームが Coachable ではないとエンジェル投資家が判断したときには、テクノロジーやサイエンスがどんなに良くても投資しないか、時には経営チームメンバーを入れ替えることが投資の条件になったりします。結局はベンチャーといえども、人が会社をマネージするので、経営チームの資質の評価が最重要になります。また、TCAだけの資金調達で足りない場合は、Angel Syndication Network (ASN)、という40ほどのエンジェル投資家グループの合同案件検討会でプレゼンして追加の資金調達をする場合もあります。

日本でもエンジェル投資家グループのような、アーリーステージのベンチャーを支援するような新しい投資家グループができることを期待しています。