Special Purpose Acquisition Company (SPAC: 特別買収目的会社) とは?

皆さんの中には、Special Purpose Acquisition Corporation (SPAC: 特別買収目的会社)ということをお聞きになられた方もいらっしゃるかと思います。SPAC自体は昔からあるのですが、最近アメリカ金融界でかなり流行っています。

特別買収目的会社は、「ブランクチェック」の上場企業ともいうべきものです。つまり、近い将来に未上場企業を買収するという目的で、資金をあつめて上場するというテクニカルな会社(「空箱」会社とでもいうもの)です。

SPACは一般企業と同様に創業者・投資家がいて(たいていはグループです)、SPACの立ち上げ資金を投資します。そのあとに、IPOの目論見書(Prospectus)を作成し投資家を募り株式公開をしますが、SPACは事業会社ではないので、近い将来に「よさそうな(=成長が見込める)」未上場企業・ベンチャーを買収します、という記述があるだけです。IPOの時点で買収先の企業については全く言及しませんし、してはいけません。一般にSPACを立ち上げる投資家(グループ)は、プライベートエクイティー、ヘッジファンド、スーパーエンジェル投資かなどがほとんどで、その人たちの手腕(ビジネスの目利きで、投資実績がある)を見込んでのIPOへの参画となります。

SPACは、IPO後24ヶ月以内に、上場時に調達した資金の80%以上を使って企業を買収しなければならない、という縛りがあります。もし、24ヶ月以内に「よさそうな」未上場ベンチャーを買収できなかった場合には、SPACは解散となり、利息をつけて投資家に資金を返却しなければいけないという規制もあります。

買収される側の未上場ベンチャーのメリットとしては、買収と同時に上場企業となれること、また、SPACが資金調達をしていますので、買収されたベンチャーが自動的に資金調達もできたことになることです。

つまりSPACは、(とりあえず)資金をPublicから集め、未上場企業を買収するというからくりです。買収された未上場企業は買収と同時に上場企業となります。典型的なベンチャーの株式上場プロセスに比べて、審査もDisclosureも簡単で、上場にかかる費用もやるいという大きなメリットがあります。いまアメリカではSPACバブルともいえる状況で、その今後が若干懸念されます。

SPAC Research社(https://www.spacresearch.com/)によると、2020年(10月までのデータ)にはSPAC IPOの件数が193件で資金調達額の合計が$67.8 bil.(日本円で約6兆8000億円)でした、2019年はそれぞれが59件、$13.9 bil. (日本円で約1兆4000億円)ですので、その異常な過熱状況がわかります。